前章までで、医療現場で実施可能な手順を設定することと、洗浄・消毒・滅菌の役割を分けて考えることを見てきました。
では、その手順で求める結果が得られることを、どのように裏付けるのでしょうか。
この章では、再処理バリデーションが何を確認し、得られた結果をどこまでの根拠として扱うのかを整理します。
何を、どの条件で検証したのかを明確にする
プロセスバリデーションとは、設定した条件のプロセスが、あらかじめ定めた要求事項を満たす結果を一貫して生み出すことを、客観的な証拠に基づいて確認し、文書化することです。
ここで扱うのは、メーカーが示す手順に従い、医療現場で実施する再処理プロセスです。メーカーが自社製品の手順を検証する役割と、医療機関が設備や作業条件を管理し、その手順を適切に実施する役割を区別します。
バリデーションでは、何をどの条件で検証するのかを、手順と対応づけて明確にします。検証済みの条件だけでなく、その適用範囲と限界も示します。
複数の機器を同時に処理する場合も、各機器の検証済み手順を満たす必要があります。医療現場の条件が検証範囲と異なるときには、その影響を確認し、追加評価や手順の見直しを検討します。
規格・技術資料は、役割を分けて使う
再処理には、手順として提供する情報を扱う規格、洗浄プロセスを扱う規格、装置や滅菌工程を扱う規格などがあります。例えば、次の資料です。[6、7]
- ISO 17664-1は、クリティカルおよびセミクリティカル機器の処理について、メーカーが提供する情報を扱います。ノンクリティカル機器については、ISO 17664-2も確認します。
- ANSI/AAMI ST98は、医療機器の洗浄プロセスの開発とバリデーションに関する要求事項を扱います。
- ISO 15883シリーズは、洗浄消毒装置に関する要求事項や試験を扱う規格群です。装置や工程に応じて、該当する部を確認します。
- ISO 17665は、湿熱滅菌の開発、バリデーション、日常管理を扱います。蒸気滅菌を検討する際に確認します。
- AAMI TIR12は、医療施設で再処理する医療機器の設計、試験、表示についての技術情報報告書です。
これらは、対象や役割が同一ではありません。どの工程の何を評価するのかを整理したうえで、対象機器、販売先、使用する版、規制当局による認知状況を確認します。
規格名を並べることではなく、評価する内容に合った資料を使い、具体的な手順や試験計画へつなげることが必要です。
試験を始める前に、判断の基準を定める
バリデーションの計画では、対象機器、処理手順、試験条件、評価方法、受入基準を事前に定めます。規制上の要求事項と、ガイダンスの推奨事項を区別し、販売先や申請区分に応じて必要な資料を確認します。
何を調べるかだけではなく、どのような結果であれば受け入れられるのかを先に決める、ということです。
例えば洗浄の評価では、残留する汚れをどの方法で回収し、測定するか、その方法の妥当性をどう確認するか、サンプル数をどう設定するかを定めます。得られた結果は、事前に設定した受入基準に照らして判断します。部位間の結果を比較するだけでは、洗浄の適否は判断できません。[1]
模擬使用は、実際の使われ方を試験条件へつなぐ
米国FDAの再処理ガイダンスでは、実際の使用を模擬した試験を、洗浄バリデーションに組み込むことを推奨しています。特に、繰り返し使用によって汚れが蓄積するリスクのある機器では、その影響を考慮する必要があります。[1]
模擬使用では、疑似汚染物の付着、機器の操作、洗浄までの待ち時間、該当する再処理工程などにより、想定する使用条件を再現します。FDAガイダンスは、複数回の使用サイクルを組み込み、その回数を科学的に正当化することを述べています。機器の特性と汚れの蓄積リスクを踏まえて設定します。[1]
汚染させる部位には、内腔、ヒンジ、重なり部分などの洗浄困難部位を含め、臨床で汚染されると想定する部位を考慮します。[1]
第2章と第3章で整理した、使用後の状態や洗浄までの待ち時間などの情報は、ここで試験条件の前提になります。現場の情報と試験計画は、別々のものではありません。
代表機器を選ぶなら、代表できる理由を示す
対象機器が複数ある場合は、使用目的、構造、材質、汚染のされ方、処理の難しさなどに基づいて、製品ファミリーを検討できます。
代表機器を用いて評価する場合は、選定した機器が各工程のワーストケースを代表する根拠と、その結果をほかの機器へ適用できる範囲を明確にします。
代表を一つ選んだことだけでは、ほかの製品への適用は説明できません。何を共通と考え、どの特性が処理の難しさを代表しているのか。その根拠と結果の適用範囲を、対応づけて示す必要があります。
結果を、使用者に伝える手順と見直しへつなげる
ここまでに挙げたのは、計画時に確認する事項の一部です。各工程について必要な準備と判定基準を定め、結果、結論、その適用範囲を記録します。
その情報は、使用者が手順を理解し、適切に実施できる形で提供することが重要です。試験結果を得ることと、現場で使える情報へつなげることは、ひと続きの仕事です。
また、製品設計、薬剤、設備、手順などに変更があれば、既存の根拠にどのような影響があるかを確認し、再評価の要否を判断します。一度得られた結果であっても、その前提が変わったときには見直す必要があります。
この章で、持ち帰ってほしいこと
再処理バリデーションは、試験結果をそろえるだけの作業ではありません。
製品と使用環境を理解し、実施可能な手順を定める。その手順に対応する試験を計画し、事前の基準に照らして結果を判断する。そして、結果の適用範囲を明確にし、使用者に伝える情報へ反映する。
本連載で見てきた医療現場との情報共有、手順設定、各工程の検討、バリデーションは、このようにつながっています。手順と、その手順を支える根拠を切り離さないこと。それが、再使用時の品質・安全性を支えるうえで大切な視点です。