手順に記載した設備や薬剤を、想定する医療現場では利用できるでしょうか。
処理条件が文書として定まっていても、その条件を実施できる環境がなければ、現場の手順にはなりません。
メーカーによる製品設計や手順の検証と、医療現場での実施。この二つをつなぐために、現場との情報共有が必要になります。
設備や作業条件は、施設によって異なる
中央材料室や滅菌管理室の設備、処理量、作業者の人数や経験は、施設によって異なります。添付文書や取扱説明書(IFU)を提供しただけでは、その手順が現場で理解され、実施できるかまでは分かりません。
どのような設備があるのか。どの薬剤を利用できるのか。どのような作業条件で処理するのか。こうした情報が、実施可能な手順を設定する前提になります。[1]
現場とのコミュニケーションは、説明を届けるためだけのものではありません。手順を具体化するための情報を、メーカーが受け取る機会でもあります。
国内で得た情報を、海外へそのまま当てはめない
海外市場に製品を供給する場合は、販売先の規制・申請区分に応じて、再処理手順とその妥当性を示す情報を準備します。その際には、対象市場で使われる設備、薬剤、作業環境を把握する必要があります。
国内の医療機関との連携で得られる情報は、手順を考える出発点になります。ただし、その情報が海外の環境も代表しているとは限りません。
国内で利用できる設備や薬剤が、対象市場でも利用できるのか。運用条件に違いはないか。国内で分かったことと、海外向けに追加で確認すべきことを分けて考えます。
複数の機器を、同じ条件で処理できるとは限らない
医療現場では、複数の種類の医療機器をまとめて処理することがあります。製品ごとに手順や許容条件が異なれば、工程を分けたり、追加の作業を行ったりする必要が生じます。
では、最も高い温度や、最も長い時間にそろえればよいのでしょうか。
それだけでは、各製品への適合性を保証できません。各機器の検証済み手順を踏まえ、同時に処理できる条件かを確認する必要があります。
一つの製品の手順を考える際にも、ほかの機器とどのように処理されるのかを知ることが、実施可能性の検討につながります。
伝える情報と、受け取る情報を整理する
メーカーは再処理方法を明確に説明するとともに、医療現場が疑問点や実施上の制約を問い合わせられる窓口を整えます。
共有する情報には、再処理回数の上限や使用終了を判断する目安、使用できる薬剤とその条件、避けるべき薬剤、製品の点検事項などがあります。薬剤の製品適合性については、確認済みの条件と未確認の条件を分けて伝えます。
一方、現場からは、利用できる設備や薬剤、手順を実施するうえでの制約、類似製品を扱う際の注意点などを確認します。
現場情報が十分に得られず、メーカーが想定条件に基づいて手順を設定する場合もあります。その場合は、判断の前提と根拠を明確にし、実施可能性を確認していくことが大切です。情報が足りないことを、前提が確かであることと取り違えないためです。
この章で、持ち帰ってほしいこと
医療現場との情報共有は、製品の説明を届けるだけの活動ではありません。再処理手順を決める前提を整える活動でもあります。
設備、薬剤、作業条件、ほかの機器との組み合わせ。これらを把握し、確認できた条件と、まだ確認できていない条件を区別する。その整理が、実施可能な手順につながります。
次章では、集めた情報と製品特性を使って、再処理手順をどのように組み立てるかを見ていきます。