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Melerdis Knowledge — Series 03

Series 03 · 医療機器の再処理バリデーション:実務編第1回

医療機器の洗浄・消毒・滅菌はどこまで必要か? ― Spaulding分類・FDAガイダンス・ISO 17664から考える、処理工程の決め方

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著者:Melerdis Partners

「この製品は、洗浄だけでよいのでしょうか。消毒まで必要なのでしょうか。それとも、滅菌まで行うべきでしょうか」。

再処理バリデーションの相談では、試験方法を選ぶ前に、何を処理工程として設定するかが論点になります。従来の手順や、使える装置の名前だけでは、その判断を説明しきれません。

基礎連載「再処理バリデーションをはじめから」では、各工程の役割と、手順・検証のつながりを扱いました。実務編では、その考え方を自社製品へ適用するときに迷いやすい論点を、記事ごとに掘り下げます。第1回は、どの工程が必要で、なぜその方法を選ぶのかを考えます。

本記事は、メーカーが再使用を意図する医療機器について、処理工程を設定する際の考え方を扱います。CDCの解説、FDAの再処理ガイダンス、ISO 17664-1:2021・ISO 17664-2:2021を参照します。FDAの推奨は米国向けの検討として区別し、すべての市場に共通する要求とは扱いません。以下の検討例は実務上の整理例であり、個別製品の処理方法を指定するものではありません。

工程の名前より先に、次の使用に必要な状態を考える

「どの装置を使うか」から始める前に、その機器を次に使用するとき、どのような状態にしておく必要があるかを整理します。

例えば、「滅菌された状態で使用する必要がある」という目標と、「蒸気滅菌を採用する」という方法の選択は、同じではありません。目標を満たせる方法を検討し、その方法が製品と使用環境に適しているかを確認する必要があります。

一方、洗浄・消毒・滅菌は、同じ目的の処理を強さだけで並べたものではありません。残った汚れが、その後の消毒や滅菌を妨げることもあります。滅菌を選べば、洗浄の確認を省けるという関係ではありません。[5]

考える順序は、「使われ方と汚染のされ方を整理する」「必要な処理水準を確認する」「その水準を実現する方法と条件を決める」です。これは判断を整理するための見取り図であり、規格が指定する固定の手順ではありません。候補の方法が成立しなければ、設計や使用条件に戻って検討します。

Spaulding分類は、処理水準を考える出発点

Spaulding分類(スポルディング分類)は、機器の使用に伴う感染リスクから、消毒・滅菌の水準を考える枠組みです。CDCの基本的な推奨は、次のように整理できます。いずれも、必要な洗浄を行うことが前提です。[1]

区分患者との接触の基本的な考え方CDCの基本的な推奨
クリティカル通常無菌の組織や血管系に接触する滅菌
セミクリティカル粘膜や正常でない皮膚に接触する少なくとも高水準消毒
ノンクリティカル健常な皮膚に接触する低水準消毒。汚染状況や用途に応じた確認が必要

これは処理水準の出発点であり、すべての製品の具体的な工程を確定する表ではありません。製品名だけで分類するのではなく、実際の使用目的と接触部位を確認します。複数の部分からなる製品では、どの部分を評価し、どの部分を再処理するのかも明確にします。ISO 17664-1の参考附属書C.2にも、この分類が示されています。[3:附属書C.2]

米国向けでは「セミクリティカル=高水準消毒」で止めない

基礎編でも触れた「少なくとも高水準消毒」は、最低限の水準を示す説明です。すべてのセミクリティカル機器で、高水準消毒を最初に選ぶという意味ではありません。米国向けのメーカーの処理指示では、FDAガイダンスの推奨も確認します。[1、2:VI、Criterion 3.B]

FDA再処理ガイダンスのCriterion 3.Bは、セミクリティカル機器について、十分な洗浄の後に滅菌することを推奨し、機器の設計上、滅菌できない場合に高水準消毒を用いるとしています。これは、分類から高水準消毒を自動的に選ぶ説明とは異なります。[2:VI、Criterion 3.B]

例えば、粘膜に接触する機器について、高温で接着部に問題が生じるとします。その事実は、評価した高温条件への耐性を考える材料になります。ただし、それだけで、ほかの滅菌方法も含めて実施できないと結論付けることはできません。

実務上は、どの方法のどの条件が適用できず、その理由が材質・構造・機能のどこにあるのかを整理します。高水準消毒を選ぶ場合にも、「セミクリティカルだから」という分類名だけでなく、選択に至る根拠を説明できることが大切です。

ここで示したFDAガイダンスの推奨と、法令上の義務は同一ではありません。また、CDCとFDAがあらゆる場面で対立しているという意味でもありません。参照資料の対象と記載内容を区別し、該当する製品別ガイダンスも確認します。[2:I、III、V.B]

患者に直接触れない機器でも、消毒不要とは限らない

「患者非接触」という説明は、再処理を不要とする根拠になるでしょうか。

FDAは、患者に直接接触しなくても、診療中に微生物や有機物で汚染され得る機器をノンクリティカルに含め、汚染状況に応じた低水準・中水準消毒を推奨しています。一方、使用中に病原体で汚染される可能性が低い機器では、洗浄のみが適切な場合も示しています。[2:VI、Criterion 3.C]

例えば、患者に接触する部分は交換し、本体は繰り返し使う製品を考えます。この場合、患者接触部分の扱いと、本体表面に体液が飛散したり、汚れた手袋で触れたりする可能性は、別に整理します。本体を患者に直接当てないことだけでは、使用後の汚染状態までは説明できません。

「直接接触しない」と「汚染されない」を分ける。 そのうえで、洗浄だけでよいのか、消毒も必要なのかを判断します。目に見える汚れの有無だけで結論付けず、想定する使用場面から検討することが重要です。

ISO 17664は、判断と検証・情報提供をつなぐ

ISO 17664シリーズも、工程を選んだ後に指示書の体裁だけを整える規格ではありません。ISO 17664-1は、情報の内容と詳細を決めるためのリスク分析を求め、機器の特性、用途、利用できる規格・指針、処理設備などを考慮する構成になっています。[3:箇条5、6.1.1、6.1.4]

適用範囲も確認します。ISO 17664-1は、クリティカル・セミクリティカル機器、または滅菌を意図する機器の処理に関する情報を扱います。滅菌を意図しないノンクリティカル機器についてはISO 17664-2が対象となり、患者への直接接触を意図しない機器も含まれます。[3:箇条1/4:箇条1]

ISO 17664-1の6.1.2・6.1.3は、消毒または滅菌が最終工程となる場合に、その目的に適した妥当性確認済みの方法を指定することを求めています。また、6.2.1では、該当する各処理段階に一つ以上の妥当性確認済みの方法を指定し、供給する市場に適したものとすることを求めています。[3]

参考附属書Cに分類があることと、本文の要求事項は区別します。「ISOはセミクリティカルなら一律に高水準消毒と決めている」とも、「FDAだけが方法を選び、ISOだけが検証する」とも整理できません。FDAも再処理指示の作成と科学的な妥当性確認を扱っています。両者の説明が重なる部分を含め、何を根拠に判断するかを確認します。[3:附属書C/6]

消毒が「最後の工程」か、「途中の工程」かも区別する

消毒を考えるときには、その目的と工程内の位置を明確にします。

ISO 17664-1の6.7.1.2の注記は、消毒が中間工程にも最終工程にもなり得ることを示しています。消毒後に再使用する手順と、消毒後にさらに滅菌する手順では、再使用前に必要な状態に至るまでの流れが異なります。[3:6.7.1.2、注記]

したがって、「洗浄の後は消毒か滅菌かの二者択一」とだけ説明すると、実際の工程を捉えきれない場合があります。ただし、この注記は、滅菌するすべての機器に、その前の消毒を一律に追加する要求でもありません。

実務では、最終的に必要な処理水準と、途中に組み込む消毒の目的を分け、対象市場の規格・指針と、処理中の取扱いを含む実際の運用に照らして判断します。なお、ここでいう「中間工程」は工程の位置を示す言葉で、「中水準消毒」という消毒の水準とは別です。

必要な水準を、製品と現場で成立する手順に変える

処理水準が決まっても、「どの方法でもよい」わけではありません。

機器の内部まで洗浄できるか。分解や専用器具が必要か。温度、薬剤、水分などに耐えられるか。繰り返し処理した後も機能を保てるか。使用場所で必要な設備や材料を利用できるか。こうした条件をつなげて、実施する方法を具体化します。[3:箇条5、6.1.4–6.1.5、6.3–6.5]

例えば、滅菌が必要な機器に対して、ある滅菌方法が使えないと分かっても、それだけで消毒に切り替えてよいとは言えません。必要な状態を満たせる別の方法がないか、設計や再使用の前提を見直す必要がないかを検討します。

さらに、選んだ工程を一つずつ並べるだけでなく、そのつながりを確認します。使用直後の処置、洗浄前の準備、洗浄、必要な消毒、乾燥、点検、包装、滅菌、保管などから、対象機器に該当する工程を組み立てます。すべての機器に、すべての工程を同じ順序で適用するという意味ではありません。[3:箇条1、6.4–6.13/4:箇条1]

ISO 17664-1の4.1–4.2は、提供情報で特定した各プロセスの妥当性を確認し、指示どおりに処理したときに必要な結果が得られる客観的証拠を用意することを求めています。工程を選んだ理由と、その工程が有効である証拠は、別々に整えてつなぐ必要があります。[3]

試験の前に、工程を選んだ理由を残す

試験計画に進む前に、次の四つを説明できる状態にすると、何を検証すべきかが明確になります。以下は実務上の整理例であり、規格が特定の文書名や書式を要求しているという意味ではありません。

  • 何を対象にするか。 製品・部品の範囲、使用目的、接触部位、汚染のされ方を明確にする。
  • どの状態が必要か。 分類と対象市場の規格・ガイダンスを踏まえ、必要な処理水準と判断根拠を整理する。
  • 何を、なぜ選ぶか。 採用する工程と方法、途中の工程の目的、採用しない方法や適用できない条件の理由を示す。
  • 何を検証し、何を伝えるか。 有効性、製品への影響、使用者が実施する条件を、試験計画と使用説明書(IFU)へ引き継ぐ。

未確認の条件があるなら、「不要」と処理せず、何を確認すれば判断できるのかを残します。判断の空欄を、試験結果で後から埋めようとしないことが大切です。

この回で、持ち帰ってほしいこと

再処理工程は、分類名や装置名だけでは決まりません。

使われ方と汚染のされ方から必要な状態を考え、対象市場の推奨・要求を確認する。そのうえで、製品と現場で実施できる方法を選び、検証した条件を使用者に伝えます。

「何の工程が必要か」「どの方法を選ぶか」「その方法を何で裏付けるか」。この三つを分けながら、つなげて考えることが、再処理バリデーションの出発点です。

第2回・第3回では、工程ごとの検討例として、ISO 17664-1の対象機器における用手洗浄へ焦点を絞ります。第2回は用手洗浄のみを指定できるか、その判断根拠、第3回は用手洗浄の試験計画と使用説明書のつながりを扱います。

参考規格・参照資料

本記事は、関連する規格・公的機関の解説と実務上の知見をもとに、医療機器評価の考え方を解説しています。本文には規格等に対する解釈や実務上の見解を含みます。規格原文の引用・逐語訳ではありません。本文中の番号は、以下の資料に対応します。

[1]CDC. Recommendations for Disinfection and Sterilization in Healthcare Facilities(外部サイト・別タブで開きます) / A Rational Approach to Disinfection and Sterilization(外部サイト・別タブで開きます). Guideline for Disinfection and Sterilization in Healthcare Facilities (2008). 主な参照箇所:Recommendations 2・3、Critical/Semicritical/Noncritical Items。

[2]FDA. Reprocessing Medical Devices in Health Care Settings: Validation Methods and Labeling(外部サイト・別タブで開きます). 2015年3月17日発行、Appendix Eは2017年6月9日更新。公式PDF(外部サイト・別タブで開きます)。主な参照箇所:I、III、V.B、VIのCriterion 3.B–3.C(本文pp.10–12)。ページはFDAガイダンス本文の印刷ページ番号です。

[3]ISO 17664-1:2021(外部サイト・別タブで開きます), Processing of health care products — Information to be provided by the medical device manufacturer for the processing of medical devices — Part 1: Critical and semi-critical medical devices. 主な参照箇所:箇条1、4.1–4.2、箇条5、6.1–6.5、6.7.1.2、6.4–6.13、附属書C.2。本文の要求事項と参考附属書・注記を区別して参照しています。日本語の対応規格はJIS T 17664-1:2025です。

[4]ISO 17664-2:2021(外部サイト・別タブで開きます), Processing of health care products — Information to be provided by the medical device manufacturer for the processing of medical devices — Part 2: Non-critical medical devices. 参照箇所:箇条1。対象範囲はANSI/AAMI/ISO 17664-2:2022採用版の本文でも確認しています。

[5]FDA. Reprocessing of Reusable Medical Devices(外部サイト・別タブで開きます). 洗浄不十分と、その後の消毒・滅菌への影響に関する参考情報。

[6]FDA. Reprocessing of Reusable Medical Devices: Information for Manufacturers(外部サイト・別タブで開きます). メーカーによる再処理指示の作成と妥当性確認に関する参考情報。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別製品への適合性や、規制当局による審査・承認の結果を保証するものではありません。実際の評価では、製品特性、対象市場および適用される規格・ガイダンスを個別に確認してください。医療現場での実施に際して、個別製品の検証済みの使用説明書に代わるものではありません。