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Melerdis Knowledge — Series 01

Series 01 · 生物学的評価をはじめから第7章

生体適合性試験の選び方 ― 規格の表だけでは決まらない理由

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著者:Melerdis Partners

前章の結びでは、分析で説明しきれない部分を補うのが、生体適合性試験だと書きました。この章は、その試験の話です。

ただし、試験は、評価すべき問いや情報の不足を整理したうえで、その問いに適した方法を選ぶものです。生物学的評価は、リスクに基づいて評価を設計し、既存の情報、化学分析、試験といった複数のエビデンスを束ねて、一つの結論を出すことです。試験は、その束の中の一本にあたります。

この試験は、JIS T 0993-1では「生物学的試験」や「生物学的安全性試験」、PMDAの審査ポイントでは「生物学的安全性試験」と書かれています。この連載では、生体適合性試験と呼びます。この章では、その一本が、いつ、どのように決まるのかを見ていきます。

評価項目が決まれば、試験が決まる、と思われがち

規格には、接触する部位と期間ごとに、評価すべき生物学的影響を示した表があります。細胞毒性、感作性、刺激性、全身毒性。自社の製品の区分を表で確かめ、評価が必要な項目を確認する。そこから、項目ごとの試験を試験所に依頼する。この流れは自然です。

第5章で見たように、この表は出発点です。そして、表が示しているのは、評価すべき生物学的影響であって、試験ではありません。

項目が決まっても、試験は決まりません。

同じ項目でも、試験は一つに決まらない

ISO 10993-1は、試験の方法を定めた規格ではありません。方法は、試験ごとに、ISO 10993シリーズの別の部が定めています。ISO 10993-1:2025の表5は、細胞毒性はISO 10993-5、刺激性はISO 10993-23、感作性はISO 10993-10、全身毒性はISO 10993-11、組織接触後の局所作用はISO 10993-6、遺伝毒性、がん原性、生殖発生毒性はISO 10993-3、血液適合性はISO 10993-4、と対応づけています。別途妥当性を示す場合を除き、試験はこれらの規格に従って行います。規格は改訂されるため、実際の申請では最新版を参照する、とPMDAも述べています。

ただし、規格があっても、試験が一つに決まるわけではありません。PMDAの「生物学的安全性評価の審査ポイント」には、個々の試験について、選択の余地があることが書かれています。その一部を、例として挙げます。

細胞毒性。 試験法には、コロニー形成法のほか、MTT法やXTT法などがあります。製品によっては、直接接触法の選択が必要です。

刺激性。 ISO 10993-23には、再構築ヒト皮膚モデルを用いるin vitro試験、ウサギを用いるin vivo試験、眼など特定の部位に特化した試験なども掲載されています。

全身毒性。 接触の期間に応じて、急性、亜急性、亜慢性、慢性の四つの試験デザインから選びます。埋植を目的とする機器では、埋植試験のデザインと併合することもできます。

血液適合性。 試験の項目は、溶血と血栓形成の視点から複数あります。血液に直接触れる機器では、溶血に加えて、補体活性化や血栓形成まで行うかどうかを、製品の特性を踏まえて選びます。間接的に触れる機器では、溶血のみで足りる場合があります。

試験を選ぶとは、実施する規格や試験名を決めることだけではありません。製品と使われ方に応じて、試験方法まで検討する必要があります。

試験を決めるのは、BEPです

規格は、試験が必要な場合、試験戦略と、試験を選んだ根拠を、BEPに文書化することを求めています。標準化されていない試験を使う場合は、選んだ方法の科学的根拠も文書化します。

試験の手順を選ぶときに考慮することも、規格に挙がっています。曝露や接触の種類、期間、頻度、条件。最終製品の化学的・物理的特性。既知の構成成分の毒性。機器の表面積と、使う人の体格や体重との比。そして、動物福祉に関する規定です。

試験の種類と方法を選ぶには、製品と使われ方から何が起こりうるのか、何をもって十分とするのかが、先に決まっていなければなりません。第4章で見た、BEPの問いです。

とくに、基準です。規格は、受容可能性の基準の例として、実施した試験から期待される結果を挙げています。基準を試験の前に決めておけば、結果を見てから基準を動かすことができません。

試験の対象も決めます。試験は、最終製品、または最終製品と同じ方法で処理した試料で行います。抽出液を作るなら、生体適合性試験用はISO 10993-12、化学分析用はISO 10993-18に従います。可能な場合は、使用条件を誇張した抽出条件を選びます。

試験は、不足する情報に応じて選ぶ

規格は、安全性を示す既存のデータが不十分なときに、信頼できるリスクの推定を得て評価を完了するため、試験が必要になることがある、としています。序文にも、物理的・化学的な情報は、必要な場合には試験の要否を判断するために使える、とあります。

まず、既存情報で評価できることと、不足する情報を整理します。不足する点に応じて、化学的・物理的特性評価、使用実績、生物学的試験などから、その問いに適した方法を選びます。動物を使う試験は、追加情報や代替法で評価できないかを検討したうえで、必要な範囲に限ります。第5章のギャップ分析を踏まえ、第6章の化学分析を含めて、必要な証拠を組み合わせます。

何が「答えが出ない」問いなのかは、リスクの大きさだけでは決まりません。FDAは、2026年9月のTown Hallで、機器のクラスではなく、材料・化学物質・工程に由来するリスクと、その不確実性を見る、と説明しました。リスクと不確実性が低ければ、リスク評価が試験の代わりになり得ます。新規・独自の材料や、把握しきれていない工程があれば、試験の価値が高くなります。試験の役割は、不確実性を減らすことです。

例:同じステントでも、必要な証拠は変わる

このTown Hallでは、リスク評価が試験の代わりになり得る仮想の例が示されました。その一つが、ベアメタルステントです。

材料が、ステンレス鋼、コバルトクロム、ニチノールなど、規格に適合した金属だとします。下流には、不動態化、電解研磨、洗浄といった工程があり、製造由来の残留物を減らします。腐食しやすさや、ニッケルの溶出も確認します。これらの情報がそろえば、急性から慢性の毒性、遺伝毒性、発がん性といった全身性の影響を、生体適合性試験や化学分析ではなく、リスク評価で扱える可能性がある、とFDAは説明しています。

同じステントでも、コーティングや薬剤、高分子のグラフトがあったり、新規の合金や高分子でできていたりすると、話が変わります。抽出物と溶出物のプロファイルに大きな不確実性が生じるため、化学分析が必要になる可能性が高い、というのがFDAの説明です。

必要な証拠を決めたのは、機器の種類ではなく、何がどこまで分かっているか、でした。この判断が、第5章のギャップ分析です。判断は記録に残し、BEPに反映します。試験をしない項目の根拠は、その記録にしか残りません。

これはFDAが示した仮想の例で、日本の審査で同じ結論になるとは限りません。考え方を示す例として読んでください。

in vitroとin vivoは、問いで使い分ける

規格では、試験に、in vitro、ex vivo、in vivoのモデルを使います。どれが優れているかではなく、どの問いに答えるかで、使い分けます。

in vitroは、細胞毒性のような初期のスクリーニングに向いています。ISO 10993-1:2025は、細胞毒性を、接触期間にかかわらず、すべての機器で評価する初期のスクリーニングとしています。

一方で、in vitroでは答えにくい問いがあります。たとえば、血栓形成を調べるin vitro試験は、血液の性状が変わらない数時間のうちに終える必要があります。臨床での使用時間が明らかに長い場合は、in vitro以外の方法を検討する、とPMDAは述べています。

動物を使う試験は、最後に検討する

ISO 10993-1:2025の序文は、試験方法の選択と試験体系の発展が、動物を継続的に削減し、苦痛を軽減・改善し、可能な場合には代替する方向で進められている、としています。

動物を使う試験は、ISO 10993-2に従って行い、評価を完了するために厳密に必要な範囲に最小化します。4.4は、可能な場合、次の順序で対応することを求めています。

まず、文献の追加情報、追加のデータ解析、追加の化学的・物理的情報で、リスクの推定を精緻化します。次に、同等に関連性のある情報が得られるなら、動物を使う試験を、in vitroやin silicoなどの代替手法に置き換えます。次に、使用する動物の数を減らします。最後に、動物の苦痛を減らすよう、実験方法を改善します。採用した方法は、正当化して文書化します。

動物を使う試験を実施してはならない場合も、挙がっています。その機器、または生物学的同等性が確立された機器について、関連する非臨床試験の有効な結果がすでにある場合。既存の臨床データに、評価対象の影響に関する有効な結果がある場合。既存の情報から、動物に受容できないリスクが示される場合。たとえば、pHから皮膚腐食性が予想される場合です。

試験の手順を選ぶ箇所にも、同じ考え方があります。放出される構成成分や分解生成物について、他の手段で有効な情報が得られ、その成分の毒性プロファイルが既知で受容できるなら、in vivoの生体適合性試験は正当化できません。

FDAのガイダンスも、3R、つまり置換、削減、改善の原則を支持しています。非動物試験法を使いたい場合は、相談するよう奨励しています。

この順序は、これまでの章とつながっています。第5章のギャップ分析も、第6章の化学分析も、動物を使う前に、問いを詰める作業でした。情報と化学分析で問いを絞れば、動物を使う試験が必要な範囲も絞られます。動物福祉は、評価の順序を決める理由の一つです。

試験結果は、合否だけでは読めない

試験を行えば、結果が出ます。その読み方にも、考え方が要ります。

ISO 10993-1:2025は、生物学的反応には種間と個体間のばらつきがあるため、動物や細胞培養で見える反応と、臨床で見える反応が異なる可能性がある、としています。細胞毒性についても、主としてin vivo毒性の可能性を示す指標で、細胞毒性のデータだけでは、機器が臨床用途に不適切とは判断できない、と注記しています。

FDAのガイダンスには、例があります。ポリプロピレン製の機器が、L929細胞でグレード2の細胞毒性を示したとします。ISO 10993-5では許容され得る結果です。しかし、ポリプロピレンは通常この程度の反応を示さないので、原因について追加の情報を求めます。逆に、洗剤成分を含む接着剤の皮膚電極は、グレード2を超える結果が予想されます。他に原因となる化学成分がないと確認できれば、許容され得ます。

同じ数字でも、材料と用途によって、意味が変わります。試験で見つかった毒性は、機器の使用目的を踏まえ、全体のベネフィットとリスクの中で評価する、とFDAは述べています。

だから、結果を読む基準は、試験の前に、BEPで決めておきます。

この章で、持ち帰ってほしいこと

生体適合性試験は、評価項目の表から自動的に決まるものではありません。項目が決まっても、試験の種類も、方法も、条件も、一つには決まりません。だから、試験戦略と、選んだ根拠を、BEPで先に決めておきます。

試験は、既存情報で不足する点を補う手段の一つです。化学的・物理的特性評価や使用実績とともに、評価すべき問いに応じて選びます。そして、動物を使う試験は、追加情報や代替法を検討したうえで、必要な範囲に限ります。

試験の結果は、合否だけでは読めません。基準を先に決めておき、機器の用途の中で読みます。

では、化学分析で得た物質の一覧は、どのようにして安全性の判断に変わるのでしょうか。毒性リスク評価を、次章で扱います。