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Melerdis Knowledge — Series 03

Series 03 · 医療機器の再処理バリデーション:実務編第4回

消毒薬を指定すれば、自社製品も消毒できるか? ― 薬液への浸漬を例に、消毒手順の有効性を確かめる

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著者:Melerdis Partners

「消毒効果が確認された薬剤を使うので、この医療機器も消毒できる」。使用説明書にこう書くだけで十分でしょうか。薬剤の資料は、消毒方法を選ぶときの参考になります。しかし、薬剤に効果があることだけでは、自社製品の内部や隙間まで消毒できるかは分かりません。薬液が必要な場所に届き、決められた濃度・温度・時間で作用することを確認する必要があります。

第2回・第3回では、用手洗浄を選ぶ理由と、その洗浄手順で汚れを落とせることの確認を分けて考えました。また、試験で行う操作と使用説明書(IFU)に記載する操作をそろえることを取り上げました。第4回では、洗浄後の消毒を扱います。薬剤の資料を確認したうえで、自社製品を消毒するために何を確かめ、どのような手順を使用者へ伝えるかを考えます。

本稿は、メーカーが再使用を意図する医療機器について、用手消毒として液体の消毒薬に浸漬する場合の確認事項を扱います。自動処理、熱消毒、清拭には、それぞれの方法に応じた評価が必要です。ISO 17664-1の対象範囲を踏まえ、FDA・CDCの公開資料と実務上の検討例を区別して説明します。米国の推奨を、すべての市場に共通する要求として扱うものではありません。

消毒する部位と必要な消毒の程度を決める

消毒方法を選ぶ前に、機器のどの部分に、どの程度の消毒が必要かを決めます。第1回で扱ったように、機器の使用目的と、患者のどこに触れるかを確認し、洗浄・消毒・滅菌のうち必要な処理を選びます。本稿は、その結果として消毒が必要と判断された機器を対象にしています。滅菌が必要な機器について、消毒で代用できるという意味ではありません。

ISO 17664-1:2021は、クリティカル・セミクリティカル機器、又は滅菌を意図する機器の処理について、メーカーが提供する情報を扱います。滅菌を意図しないノンクリティカル機器には、第2部の適用範囲を確認します。[1:適用範囲]

同規格の6.7.1では、消毒を意図する機器について、機器がそのような処理に耐えられない場合を除き、少なくとも一つの妥当性を確認した自動消毒方法を指定することを求めています。耐えられない場合は、その旨を使用者に知らせます。自動消毒が不可能な場合は、妥当性を確認した用手消毒方法を指定します。本稿では、この位置づけを踏まえ、薬液への浸漬による用手消毒を検討する場合の確認事項を扱います。[1:6.7.1]

消毒後にそのまま再使用するのか、続けて滅菌するのかによって、必要な処理の順序や内容は変わります。また、汚れを落とす洗浄と、微生物を減らす消毒は目的が異なります。FDAの再処理ガイダンスでは、洗浄の効果を消毒・滅菌とは分けて確認することに加え、消毒手順とその説明が適切であることを確認するよう推奨しています。[2:V.A、IX.A]

薬剤の効果と自社製品での消毒を分けて確認する

薬剤の資料では、「どの微生物に効果があるか」「どの濃度・温度で、何分間接触させるか」「どの機器に、どの方法で使えるか」を確認します。例えば、FDAの高水準消毒薬等の公開一覧でも、必要な接触条件や使用できる機器の制限は製品ごとに示されています。同じ有効成分を含む薬剤でも、使い方が同じとは限りません。「高水準消毒薬」という表示だけで、自社製品に使えると判断しないようにします。[3]

自社製品には、細い内腔(機器内部の管状の部分)、部品の継ぎ目、薬液が入りにくい隙間があるかもしれません。薬剤に効果があっても、消毒したい場所に薬液が届き、必要な濃度・温度・時間が保たれなければ、その場所を消毒できたとは判断できません。CDCも、微生物が付着している場所、薬剤の濃度、温度、汚れ、接触時間などが消毒効果に影響すると説明しています。[4]

まず、薬剤の説明書や試験報告書を読み、どの機器や使い方で消毒効果が確認されているかを調べます。次に、その条件を自社製品の形状や予定する使い方と比べます。例えば、資料に細い内腔の評価がなければ、自社製品の内腔にも薬液が届き、消毒できるかを確認する必要があります。このように、資料だけでは分からない点を挙げ、その点を確かめる試験や確認方法を決めます。薬剤そのものの効果を調べる試験を最初からすべてやり直すのではなく、自社製品でその薬剤を使うために、何を追加で確認する必要があるかを考えます。

試験機関に確認したい部位と手順を伝える

試験を依頼するときは、「この消毒薬で試験してください」だけでなく、「この機器の、この部分を、この手順で消毒できるか確認したい」と伝えます。そのために、対象機器、消毒したい部位、必要な消毒の程度(消毒水準)、予定する操作手順をまとめます。これらを試験機関と共有してから、試験方法と合格と判断する基準を検討します。

複数の製品のうち一つを代表として試験する場合は、その結果をほかの製品にも使えると考えた理由を記録します。例えば、同じシリーズでも、内部の管が長い製品や接続方法が違う製品では、薬液を行き渡らせる操作が変わる可能性があります。見た目が似ているだけで判断せず、内腔の長さや太さ、接続口、隙間など、消毒のしやすさに関係する部分を比べます。

微生物を使って消毒効果を調べる場合は、どの菌を使い、機器のどこに付着させ、処理後にどう回収するかを決めます。あわせて、回収した試料中の薬剤の作用を止める「中和」の方法、結果を比較するための対照、合格基準も検討します。菌を適切に回収できない場合や、回収後も薬剤が作用し続ける場合には、残った菌を実際より少なく数えてしまうおそれがあります。FDAの薬剤向けガイダンスでも、回収と中和の方法が適切に働くことを確認する考え方が示されています。[5:III.H.2]

ただし、このFDA資料は、液体化学滅菌剤・高水準消毒薬の申請者向けです。記載されている試験を、すべての再使用機器メーカーがそのまま実施するという意味ではありません。自社製品で使う試験菌、試験数、合格基準は、必要な消毒水準と、適用する規格・製品別ガイダンスを確認して、試験前に決めます。[2:IX.A/5:適用範囲]

具体例で見る検討の進め方

以下は仮想事例です。特定の機器や薬剤に対して、処理方法や数値条件を指定するものではありません。

例1 浸漬しても内腔に気泡が残る機器

細い内腔を持つ機器を薬液に沈めたところ、内部に気泡が残ったとします。外側が薬液に触れていても、気泡がある部分には薬液が十分に触れません。そのため、沈めただけでは内部全体を消毒できるとは判断できません。CDCも、内腔に薬液を接触させることと、気泡がその妨げになることを注意点として挙げています。[4:Duration of Exposure]

この場合は、「どの部品を外すか」「どの接続口から薬液を入れるか」「どう空気を抜くか」「どの向きで沈めるか」を決めます。さらに、必要な部位に薬液が行き渡ってから、決められた接触時間を確保できるかを確認します。使用説明書にも「薬液に浸す」とだけ書くのではなく、試験で行った薬液の注入や空気抜きの操作を、使用者が同じように行えるよう記載します。

例2 調製直後と使用中で薬液の状態が変わる場合

新しく調製した薬液で消毒できても、繰り返し使った薬液で同じ結果が得られるとは限りません。薬液を繰り返し使用する予定であれば、何日間使えるかに加え、必要な有効濃度と、交換が必要になる条件を薬剤の説明書で確認します。CDCは、内視鏡の高水準消毒について、最低有効濃度(効果を得るために必要な最低限の濃度)の確認と、許容される再使用期間の管理を推奨しています。[6:7.aa]

例えば、同じ薬液で複数の機器を順番に処理するなら、洗浄後の機器から入る水分や残った汚れ、薬液の濃度確認や交換の方法を試験機関に伝えます。そのうえで、実際に認める使い方の中から、消毒効果が得られにくい条件を選んで評価します。条件の選び方は、薬剤の特性によって異なります。効果が心配だからといって、濃度を上げたり接触時間を延ばしたりする変更を独自に加えるのではなく、機器と薬剤の説明書で認められる条件を確認します。

例3 消毒できても薬剤残留や材料への影響が問題になる場合

消毒効果の試験では良い結果が得られたものの、すすぎ後に安全性に影響する量の薬剤が残るおそれや、繰り返し処理した後に接着部が変化するおそれが分かったとします。この場合、消毒効果の試験に合格しただけでは、安全に再使用でき、機器が正常に働くことまで確認できたとはいえません。CDCも、機器の材料などに対して薬剤が適しているかの確認や、内視鏡の高水準消毒後に残った薬剤をすすぎで除去することを推奨しています。[6:7.r、7.t]

まず、すすぎに使う水の水質、量、回数、内腔に水を流す方法を決め、その手順ですすいだ後の薬剤残留を評価します。確認するのは、残留量が安全上許容できる水準に管理され、後続の処理を妨げないことです。[2:VI Criterion 5.F]また、予定する処理回数を繰り返した後も、材料や接着部に問題がなく、機器が正常に働くかを別に確認します。必要なすすぎ条件や確認方法は製品と用途によって異なるため、内視鏡の手順をそのまま他の機器に使えるとは限りません。

すすぎ後の乾燥も、処理の一部として検討します。ISO 17664-1では、乾燥が必要な場合、少なくとも一つの検証した乾燥方法を指定することを求めています。FDAも、高水準消毒後などに残る水分による再汚染のリスクを抑えるため、処理後・保管前の乾燥手順を使用説明書に記載することを推奨しています。機器の構造や後続の処理に応じ、内腔も含めた乾燥方法と条件を定めます。[1:6.8/2:VI Criterion 5.K]

試験で行った操作を使用説明書にも記載する

使用説明書に記載するのは、薬剤名、濃度、温度、時間だけではありません。試験で行った準備や操作に加え、必要なすすぎ・乾燥の手順も確認します。例えば、例1の試験で内腔に薬液を注入して気泡を抜いたのであれば、使用説明書にもその操作を記載します。省略する場合は、省略しても同じ消毒効果が得られるかを確認する必要があります。試験担当者が当然と考えて行った操作も、使用者に伝わるようにします。

機器、薬剤、使用する装置の説明書を並べ、指定された条件や操作に食い違いがないかも確認します。例えば、薬剤が求める温度に機器が耐えられない場合、その機器と薬剤の組合せは見直す必要があります。FDAの再処理ガイダンスも、有効性を確認した消毒・滅菌方法の指定や、参照する説明書との整合性を扱っています。[2:VI、Criterion 5.I、5.O]

確認するときは、使用説明書の操作ごとに、「この操作は、どの試験や資料で確認したか」「どの製品や条件まで同じ手順を使えるか」を記録すると、未確認の点が分かりやすくなります。例えば、内腔への注液に使う接続器具を変更する場合は、元の試験報告書を確認し、変更後も薬液が行き渡るかなど、再確認が必要な点を検討します。記録の書式は一例であり、特定の様式を求めるものではありません。

第4回の確認リスト

  • 機器のどの部分に、どの程度の消毒が必要か、また消毒後に再使用するのか滅菌するのかを決めている。
  • 自動消毒を指定する原則と例外を踏まえ、用手消毒を指定する位置づけを整理している。
  • 薬剤の資料で確認できることと、自社製品で追加の試験や確認が必要なことを書き出している。
  • 内腔や継ぎ目まで薬液を行き渡らせ、必要な時間接触させるための操作を決めている。
  • 試験方法、菌の回収・中和の確認方法、合格基準、試験数とその理由を試験前に決めている。
  • すすぎ後の薬剤残留が安全上許容できる水準にあることと、繰り返し処理による材料・機能への影響を、消毒効果とは別に確認している。
  • 必要な乾燥の方法・条件を定め、すすぎ・乾燥を含む確認した手順を使用説明書に記載し、機器・薬剤・装置の説明書に食い違いがないことを確認している。

消毒薬を決めたら、次に、その薬液を機器の必要な場所まで届け、決められた濃度・温度・時間で消毒できるかを確かめます。さらに、すすぎ後の薬剤残留が安全上許容できる水準に管理されているか、繰り返し処理しても機器が正常に働くかを確認します。必要なすすぎ・乾燥を含め、使用者が同じ処理を行えるよう使用説明書に記載します。

第5回「消毒方法が変わると、何を検証すべきか?」では、自動洗浄消毒器による処理、熱消毒、装置による化学消毒、清拭を取り上げます。方法ごとに何を確認し、使用説明書へどう反映するかを考えます。

出典と参照箇所

[1]ISO 17664-1:2021. Processing of health care products — Information to be provided by the medical device manufacturer for the processing of medical devices — Part 1: Critical and semi-critical medical devices. 参照箇所:適用範囲、6.7.1(自動消毒と用手消毒の位置づけ)、6.8(乾燥)。

公式資料(外部サイト・別タブで開きます)

[2]FDA. Reprocessing Medical Devices in Health Care Settings: Validation Methods and Labeling. 2015年3月17日発行、Appendix Eは2017年6月9日更新。参照箇所:V.A、VIのCriterion 5.F・5.I・5.K・5.O、IX.A。現行公開PDFの冒頭にはQMSR施行に関する注記がある。本稿では旧品質システム規則の条項を現行要求として引用していない。

公式資料(外部サイト・別タブで開きます)

[3]FDA. FDA-Cleared Sterilants and High Level Disinfectants with General Claims for Processing Reusable Medical and Dental Devices. 製品別の接触条件と適用範囲を参照。一覧の表示更新日は2023年12月であり、個別製品の現行の表示・使用説明書も確認する。

FDA公式の製品一覧(外部サイト・別タブで開きます)

[4]CDC. Factors Affecting the Efficacy of Disinfection and Sterilization. 2023年11月28日掲載。参照箇所:Number and Location of Microorganisms、Concentration and Potency of Disinfectants、Physical and Chemical Factors、Organic and Inorganic Matter、Duration of Exposure。

CDC公式解説 消毒効果に影響する因子(外部サイト・別タブで開きます)

[5]FDA. Content and Format of Premarket Notification [510(k)] Submissions for Liquid Chemical Sterilants/High Level Disinfectants. 2000年1月3日発行。参照箇所:適用範囲、III.H.2。薬剤の申請者向け資料として、試験方法の検証に関する考え方を参照。

公式資料(外部サイト・別タブで開きます)

[6]CDC. Recommendations for Disinfection and Sterilization in Healthcare Facilities. Guideline for Disinfection and Sterilization in Healthcare Facilities (2008). 参照箇所:7.r、7.t、7.aa。これらは内視鏡の処理に関する推奨であり、全機器共通の手順として引用していない。

CDC公式推奨 消毒と滅菌(外部サイト・別タブで開きます)

初稿の参照確認日:2026年10月14日。追記・改訂箇所の確認日:2026年10月30日。本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別製品の処理手順を指定するものではありません。実際の評価では、製品特性、対象市場、適用規格・ガイダンスと、関係する製品の現行の使用説明書を確認してください。